ソメイヨシノが実をつけているのを見たことがありますか?私は6月頃小さなサクランボの様な実がバラバラと落ちているのを見たことがあります。勿論食用の桜桃とは違い、食べられません。さてー、この実は発芽してもソメイヨシノにはならないのですが。何故でしょう。
◼ソメイヨシノは「不稔性」か?
「不稔性」とは、植物において、種子が形成されないか、種子が出来てもそれが成体へと成長する能力を持たないことを指します。ソメイヨシノの場合、種子をつくることは出来るので、正確には「不稔性」ではありません。
実際に、街路樹等でソメイヨシノだけが植えられている様なところでは実をつけませんが、公園や校庭など他の種のサクラと混植されているところでは良く実をつけています。
「環境によっては不稔性とならない」と言った方が正しいかもしれません。
◼自家不和合性
多くの植物は「自家不和合性」という性質を持っていて、「自分の花粉」を「自分の雌しべ」に受粉した場合、種子をつくることは出来ません。受粉はしても受精は出来ないのです。
しかし、ハチ等の動物や風によって運ばれてくる「他の花粉」により、種子をつくることは出来ます。これを「他家受粉」と言います。
(この「他の」と言うのは、「科が違う」等あまりかけ離れていても受精はしません。ほどほど遠い別属、もしくは別種のものが良いとされています。また、同種の他の個体の場合も「他家受粉」と言います。)
この理由としては、「多様な遺伝子を持つ生物種は変動する環境に耐え抜く力を持つ」と言う種の存続のために身につけた植物の知恵ではないかと言われています。
さて、ソメイヨシノですが、この「自家不和合性」のために、ソメイヨシノどうしの種子は出来ません。
全てのソメイヨシノは1本の木から生まれたクローンで、同じ形質のものだからです。
ソメイヨシノと他のサクラの雑種の種子は出来ますが、これは発芽してもソメイヨシノにはなりません。
ソメイヨシノが殖えることが出来るのは「挿し木」や「培養」等によるクローン増殖しかないのです。これは他の交配種の植物の場合にも当てはまります。
ちなみにソメイヨシノはその親であるオオシマザクラやエドヒガン(どちらも野生種)と良く雑種をつくるそうです。ほどほど近いのが良いのでしょう。
◼美しいソメイヨシノ
今年はソメイヨシノが咲くのが早いですね。
東京は昨日雨が降りましたし、4月まで持つかどうか心配です。満開の桜の下で入学式の写真を撮りたい親御さんも沢山いらっしゃるでしょう。
卒業式、入学式の背景に欠かせなくなっている美しいソメイヨシノですが・・・。
そもそも植物の花と言うものは、受粉(送粉)を行ってくれる虫や鳥等の動物を引き寄せるために目につきやすい色や特有の香りを持たせたり、蜜や花粉を提供したりしているものです。
しかし、ソメイヨシノがどんなに美しく咲いても、蜂やスズメが花粉を運んでくれたとしても、自分の力で同じ子孫を残すことは出来ないのです。
人を喜ばせ、皆に愛されるソメイヨシノ。
この時期日本中の景色を変えるソメイヨシノ。
しかし人の手を介さないと生き残れないソメイヨシノ。
なんだかちょっと悲しい花だなあ・・とも思います。