榧の木に榧の実のつくさびしさよ 北原白秋
「しょせん俺の息子だなあ」という意味でしょうか?
これが「実がなる」とあれば嬉しさが伝わってくるような気がしますが
「実のつく」とあるのでさびし~く聞こえます。
日本語ってすごい。
さてさて、週2回の更新が目標だったのですが、なかなか忙しく週1回のペースになってきました。ごめんなさい。
今回で高尾山のお話は一区切り。
来月から「秋の花」について書こうと思っています。
学生時代山岳部だった方と話していて「高尾山?山登りというかハイキングですよね」と言われてしまいました。その通りです。
■高尾森林センター
学生時代からもう20年以上何度も登っている(ハイキングしている)高尾山ですが、高尾森林センターという施設があることを知らずにいました。
今回のムササビツアーで初めて入り、駅のこんな近くに高尾山のことを紹介する施設があったことを知りました。
入口にムササビのぬいぐるみがぶら下がっている平屋建ての建物に入ると、高尾山の歴史、植物、生き物などの紹介の展示物等があり、勉強会などができるようテーブルや椅子もあります。
書籍やDVDも多くあり、高尾山の絵や写真の展覧会なども行われています。
その中で私が興味を持ったのは、ホールの奥の壁際に高尾山に生えている様々な種類の樹木の丸太が並んでいる所でした。丸太のそばにはそれぞれの材木としての特徴などが紹介されています。
そこに直径20cm×高さ80cmくらいのウバメガシとキリの丸太が二つ並べてあるコーナーがあり「持ってみて下さい」と貼り紙が貼られていました。
それぞれ持ち上げてみると、ウバメガシの重いこと!キリの軽いこと!
ウバメガシは姥目樫と書き、鰻屋さんや焼き鳥屋さんなどで使われる備長炭という炭の材料となる木です。備長炭は安定した火力を長時間保つことが出来るとても良い炭です。
キリは「娘が生まれるとキリを植え、お嫁に行く時タンスをつくる」と言われるくらい、成長がとても早く、軽いので家具などに加工されます。
体積は同じなのにこの重量の違い!年輪を見ると成長速度の遅いウバメガシが細かく年輪が入っているのに対してキリの年輪は粗く入っています。キリは成長が早いので、大きくても樹齢が低く年輪も粗いのですね。
私は「榧(カヤ)の木」は無いかと探したのですがサンプルはありませんでした。
カヤの材は全国でも生産量が少なく希少であると聞きます。サンプルが取れなかったのでしょうか。
■カヤとイヌガヤとモミの違い
9月7日土曜日の午後ムササビツアーにて、高尾山の1号路と4号路を歩いていて、カヤとイヌガヤとモミを見ました。
この3種はよく似ているのですが、分類上は全く違う仲間です。
今回この3種がすぐ近くに生えていたので、インストラクターの方に伺ってその違いを比較することが出来ました。
季節を問わず見分けるには葉っぱがわかりやすいそうです。
葉先が鋭く触って痛いのはカヤです。
実際触ってみてとても痛かった!カヤは芽を出したばかりの赤ちゃんの木でも痛いのだそうです。
■碁盤、将棋盤
カヤは、高級碁盤や将棋盤の材料としても知られています。これらは樹齢250~300年以上の木でないととれない。希少なわけです。
カヤの寿命はとても長いそうですが、成長がとても遅い。ゆっくりゆっくり少しずつ大きくなるのです。年輪の幅も狭い。
長い時間かけて密度の高いずっしりとした材ができあがるのです。また油分が多いため時間が立つと独特のツヤ、香りが出るそう。
さらに「槇は万年、榧限りなし」という言葉があるほど耐久性があります。
ご趣味の方はよくご存知だと思うのですが碁盤や将棋盤で、良いものは数百万円だと聞いて驚いたことがあります。
特に宮崎県の日向地方、奈良の春日地方が産地として有名だそうです。
その理由として、例えば日向地方は、山間部の寒暖の差が大きいため、くっきりと美しい木目ができる。生育している土地に岩盤が多いため、育ちが遅く年輪の目詰まりが細かくなる・・ことなどがあげられるそうです。
材の乾燥だけで15年もの時間がかかるそうです。名品というのはいい材の産地があって、時間をかけて丁寧に加工する伝統の技術があって、はじめて出来あがるのだなあとため息がでます。
ちなみにうちの囲碁の対局ソフトに設定されているのは、本榧の碁盤に碁石を打つ時に出る音です。モニター上の盤面をマウスでクリックして石を打つと「ピシッ!」という本榧独特の高い音が響きます。
なんだか不思議な世界です。
我が家の碁盤。私の亡き祖父が愛用していたもの。100年たっています。これはカツラという落葉広葉樹の材でできています。カツラの碁盤は時間がたつと写真のように黒くなってしまいます。カヤよりは安いものですが、私にとって大切な思い出の碁盤です。
カヤの碁盤は年月がたっても美しい明るい黄色。私は焼き芋を切った断面の色を思い出しました。残念ながら画像はありません。
■ ちょっと囲碁の話
今月から上映されている「天地明察」(沖方了、角川文庫)の原作を読んでいます。
今上巻を読み終わったところ。
これは徳川家綱の時代、囲碁の名人で後に囲碁界から離れ、日本独自の暦づくりに携わることになる安井算哲のお話です。
数年前に子供たちを中心に囲碁の一大ブームを惹き起こした漫画の「ヒカルの碁」に出てくる藤原佐為(さい)が取り憑いた本因坊秀策が出てくるもっと以前のお話。
同じ本因坊家の本因坊道策という人が安井算哲のライバルとして出てきます。
道策役は関ジャニの横山くん。主人公の安井算哲はV6の岡田くんです。
囲碁の名人たちは将軍様の前で「御城碁(おしろご)」(大変な名誉だったらしい)を打つのが一番重要な仕事らしいのですが、その「御城碁」が真剣勝負の場では無かったということが書いてあって驚きました。
将軍様が楽しめる様色々な打ち方を披露する芸の発表会みたいなものだったのですね。
囲碁の歴史は古く、中国で3000年前~4000年前に生まれたと言われ、日本に伝えられて発達したと聞きます。
かつては中国も韓国も日本の名人の打った棋譜を見て勉強したのだそうですが。
この小説にも「囲碁は教養の一つ。交流の手段。大名たるもの、打ち筋について持論の一つや二つ持っていなければならなかった」とあります。
そう言えば徳川家康だったかしら。囲碁を打ってみて部下の力量を測ったとか。
さておき、岡田くん効果で(女性中心に?)囲碁の再ブームは来るのでしょうか。